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第34話 菌賀新年,A Happy NewSanKin!

2017.01.01

日本食品分析センター学術顧問・北海道大学名誉教授 一色賢司

一色 賢司先生の略歴

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新年、明けましておめでとうございます。

我が国には、食品の保健機能表示制度があります。食品として摂取後、健康に良い効果をもたらす期待を表示することができる食品は、図1のように3つに分類されています。この3つの食品群以外の食品は、健康への良い影響やその期待を表示することはできません。保健機能表示食品における健康影響をもたらす物質を関与成分と呼んでいます。

乳酸菌は多くの保健機能表示食品に関与物質として用いられています。古来より、乳酸菌はヨーグルトなどの乳製品のみならず、多くの食品の製造に用いられてきました。一般の食品にも乳酸菌は使われています。図1の例1は乳酸菌が加えられたチョコレートです。一般食品ですので機能性表示はできません。例2は特定保健用食品として、腸内の環境を改善し、おなかの調子を整えますという表示の認可を得たヨーグルトです。

第21話では食品衛生法に基づく食品の規格基準を取り上げました。乳酸菌は総菌数が超過する原因となる場合があります。食品のリコール回収、そして廃棄の原因にもなっています。食品と乳酸菌の関係について整理してみましょう。

 

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1) 乳酸菌とは

乳酸菌は、細菌の生物学的な分類上の特定の菌種ではなく、乳酸を産生する細菌群に対して名付けられたものです。糖類から多量の乳酸を産生し、かつ、悪臭の原因になるような腐敗物質を作らないものが、一般に乳酸菌と呼ばれる。その一方で、糖から乳酸と酢酸を産生するビフィズス菌を、表1のように乳酸菌から除外する場合もあります。一般に、乳酸菌と呼ばれて利用されることが多い代表的な細菌には、以下のものがあります。

①ラクトバシラス属 (Lactobacillus)、②ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)、

③エンテロコッカス属 (Enterococcus)、④ラクトコッカス属 (Lactococcus)、⑤ペディオコッカス属(Pediococcus)、⑥リューコノストック属 (Leuconostoc)

ここでは、ビフィズス菌も加えて考えてみたいと思います。乳酸菌は自然界に広く分布していて、土壌や海水を始め、動物から見つかることもあれば植物から見つかることもあります。乳酸菌は、酸素を必要としない通性嫌気性のものや、酸素があると生存できない偏性嫌気性のものもいます。ヒトの大腸には、たくさんの乳酸菌がいます。乳酸菌が、ヒトにとって有益な働きをする場合、善玉菌と呼ばれることがあります。

乳酸菌は、腸の調子を整えて消化吸収を助ける効果や免疫系に作用してアレルギーを防いだり、悪玉菌を減らしたりすることから保健機能食品の関与成分として使われています。有益な乳酸菌の健康効果を期待して摂取することをプロバイオティクスと呼び、有益菌を増やすことで腸内環境の改善をして便秘や病気を予防する方法として注目されています。

 

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2) 食品における乳酸菌の制御

 乳酸菌は,酸性条件下でも生育します。乳酸菌には、低温や高温に耐えたり,高濃度の食塩存在下や低い酸素濃度でも増殖したりする性質をもつものがいます。食肉や魚介製品では変色,ネト,腐敗臭の原因となる腐敗菌でもあります。

 乳酸菌を食品にさせたリ、増殖させたくない場合は、問題となる乳酸菌の性質を良く調べて対応する必要があります。一般的な乳酸菌の性質は、①グラム染色陽性、②胞子を作らない、③運動性はない、④酸性に強い、⑤バイオフィルム(第12話)を作って環境抵抗性を示すものがいるなどです。

 食品取扱い施設を清潔にしていても原料や人、資材等とともに侵入してきます。また、工場等にバイオフィルムを作って棲みついている場合もあります。胞子を作りませんので、低温殺菌等の効果は十分に期待できます。なお、乳酸菌が産生するバクテリオシンと呼ばれる抗菌性物質を食品に使用するには、食品添加物として食品衛生法に基づく指定が必要です。現在、我が国で認可を受けているバクテリオシンは、ナイシンのみです。ナイシンも使用基準を遵守して食品に添加することが必要です。第3話(表2、再掲)でお話した微生物制御の基本を確認して、本年も消費者に喜ばれる食品を提供していただくことをお願いします。

 

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3) 乳酸菌に感謝

我が国には、牛乳を利用する知識や技術が6世紀頃、伝えられたと考えられています。酥(そ),酪(らく),醍醐(だいご)などの牛乳の加工品もつくられるようになりました。酪はヨーグルト、酥はチーズであろうと推察されています。醍醐は,最も美味しい乳製品という意味です。醍醐味という言葉が今日まで伝わっていますね。乳酸菌が活躍したであろうと考えられています。酥,酪や醍醐の前に、野菜の塩漬けなどの漬物が食べられていたと考えられています。漬物も乳酸菌が活躍しています。お正月の食べ物も乳酸菌にお世話になっているものが沢山あります。美味しく、楽しく、感謝しつつ、ご賞味ください。

 

参考文献:

1) 消費者庁:「機能性表示食品」制度がはじまります!(2015年)

http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1443.pdf#search=%27%E4%BF%9D%E5%81%A5%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%A3%9F%E5%93%81+%E5%88%B6%E5%BA%A6+%E8%A7%A3%E8%AA%AC%27

2) 日本乳酸菌学会編:乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス、京都大学学術出版会(2010)

3) 小久保彌太郎編:現場で役立つ食品微生物、第4版、中央法規(2016)