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第21話 食品の微生物規格について

2015.12.01

日本食品分析センター学術顧問・北海道大学名誉教授 一色賢司

一色 賢司先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 食品の安全性を確保するために、食品に関する微生物規格・基準が定められています。その法的根拠は、食品衛生法です。第五条では、「清潔衛生の原則」が示され、第六条では「不衛生食品等の販売が禁止」されています。第九条では「病肉等の販売等の禁止」され、第十一条では「食品等の規格及び基準」を厚生労働大臣は定めることができるとされています。

 

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具体的には、「食品,添加物等の規格基準」(厚生省告示第370号)の中に、成分規格(項目、規格値、試験法)や製造基準、保存基準、加工基準、使用基準、調理基準などが示されています。乳製品は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(厚生省令第52号)で規格・基準が定められています。地方自治体は、国の微生物規格・基準と矛盾しない範囲内で条例を定めて、食品の安全性確保を行なう場合があります。

 

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1)食品の微生物規格の例について

 表1~3に厚生省告示第370号に示されている食品ごとの微生物規格を示します。

食品の衛生指標として、細菌数や大腸菌群などで規制されている食品もあります。細菌数は、生菌数と表現されることもあります。食品の全般的な微生物汚染の程度を示す代表的な指標です。通常、32~35℃で48時間培養後のコロニー数から算出され、一般生菌数、好気性菌数あるいは標準平板菌数と表現されることもあります。

 偏性嫌気性菌,微好気性菌あるいは好塩性菌や低温細菌などは増殖せず、計測されないことに配慮が必要です。乳酸菌飲料や発酵食品などには、多くの細菌が存在していますので、衛生指標としては不向きですが、その他の多くの食品で細菌数が多い場合には、不衛生な食品である可能性が高いことを示す指標となります。

 

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大腸菌群(coliforms)および大腸菌(E.coli、イタリック体)は、食品の衛生状態を推定するための代表的な衛生指標です。大腸菌群はグラム陰性の無芽胞桿菌,乳糖を分解して酸とガスを産生する通性嫌気性の一群の細菌です。生物学の分類に基づくものではなく行政的な用語です。

大腸菌群中の44,5℃で発育する菌群を糞便系大腸菌群といい,このなかでインドール産生能(Ⅰ),メチルレツド反応(M),Voges-Proskauer反応(Vi)およびシモンズのクエン酸塩利用能(C)の四種類の性状によるIMViC試験のパターンが「++--」のものを大腸菌として分類しています。糞便系大腸菌群は高率に大腸菌を含むことから,煩雑な確認試験を行わずに大腸菌の存在を推定しようとする意図で考えられた菌群です。わが国の成分規格におけるE.coli(ゴシック体、表1~3)は,この菌群の事です。食品から、これらの菌や菌群が検出される場合には、ヒトや動物の糞便汚染があったことを示唆し、不潔な食品と考えられます。

大腸菌群は飲料水の衛生上の適否判定のために提案された衛生指標です。糞便汚染を受けていない食品、特に植物性食品に存在することから、未加熱の食品では衛生的な意義はありません。一方、加熱食品では、加熱後に大腸菌群が検出される場合は加熱処理が不適切であったか、加熱後に二次汚染などを受けた可能性を示唆します。

 大腸菌や糞便性大腸菌E,coliが検出される食品は、糞便汚染を受けた可能性が高く、大腸菌群が検出された場合よりも、さらに不潔な取扱いを受けた可能性が高くなります。

 

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表1~3のように大腸菌群が乳・乳製品全般,清涼飲料水,永雪,包装後加熱食肉製品,魚肉ねり製品および多くの冷凍食品に,糞便系大腸菌群を対象としたE.coliが非加熱食肉製品,乾燥食肉製品,生食用かきおよび凍結前未加熱の加熱後摂取冷凍食品の成分規格にそれぞれ採用されています。

 

参考文献:

1)厚生労働省:食品別の規格基準について

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/shokuhin_kikaku/index.html

2)小久保彌太郎編:現場で役立つ食品微生物Q&A、第3版、p.196、中央法規出版(2011)