home食品衛生コラム食品と微生物とビタミン愛第144話 春が来てもノロウイルスには要注意!

第144話 春が来てもノロウイルスには要注意!

2026.03.01

日本食品分析センター学術顧問・北海道大学名誉教授 一色賢司

一色 賢司先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 図1は、感染性胃腸炎の報告件数の変化の様子です。感染性胃腸炎は、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。ウイルス感染による胃腸炎が多く、毎年秋から冬にかけて流行します。

 感染性胃腸炎の原因となる病原体は、ノロウイルスが多く、ロタウイルスなどのウイルスのほか、細菌や寄生虫が病因の場合もあります。

 図1のように3月に入ると、通常、感染性胃腸炎の報告数は落ち着きますが、昨年2025年は増えていました。この理由は、3月に入り遺伝子型の異なるノロウイルスによる新たな感染が広がったためと、推測されています。

 図1の2016年10~12月の感染性胃腸炎の発生件数の増加は、図2のように患者数では過去10年間で最多でした。この原因も、ノロウイルスGⅡ.17の流行に加えて、新たに変異を起こしたGⅡ.2による流行が加わったことによると考えられています。

 ノロウイルスは食品を媒介として感染する、いわゆる食中毒を起こす性質もあります。ヒトからヒトに直接、感染する場合もあります。今年も、十分に警戒していただきたいと思います。

1)2025年のノロウイルス食中毒

 食中毒統計の速報などによれば、2025年の食中毒全体は、事件、患者とも例年よりも少なかったようです。一方、ノロウイルス食中毒は多かったようです。表1には、食中毒統計の速報値を2025年の月別に集計した結果を、患者数で示しています。

 2025年2月には、7,689人もの患者数が報告されています。詳細は不明ですが、加古川市の業者の配達した弁当で2,307人もの方がノロウイルス食中毒を発症したようです。幸い、死亡例はなかったようです。 

 岐阜県でも、配達された弁当によるノロウイルス食中毒が複数回発生しています。約440人が症状を訴え、うち1人が死亡しています。この死亡例は、食中毒との関係は不明とされています。

 2025年は、3月になってもノロウイルス食中毒の発生は続きました。図1の感染性胃腸炎の報告数の変化に反映されています。

今年2026年も、春が来てもノロウイルス食中毒の発生が続く可能性があります。ノロウイルスによる食中毒特徴を、表2に示しました。油断しないことが必要です。

2)ノロウイルスとは

 表3のように、ノロウイルスは分類学上の属名であり、種名はノーウォークウイルス(Norwalk virus)です。

 ノーウォークウイルスは、1本鎖(+)RNAを持っています。塩基配列によりGIからGVに分類されています。ヒトに感染するのはGI、GIIおよびGIVの3のウイルスで、ヒトの感染症や食中毒に関係するノロウイルスの大半はGIとGIIに属しています。

 GIおよびGIIの各遺伝子群は、14種類(GI/1~GI/14),21種類(GII/1~GII/21)の遺伝子型に分類されています。異なる遺伝子型は基本的に抗原性が異なり、ワクチンによる対策を困難にしています。

 ノロウイルスは、1本鎖のRNAウイルスであるため、変異を起こし易い性質を持っています。変異により、ヒトの免疫から逃れる場合もあります。

 ノロウイルスはエンベロープ(外皮)を持たないため、エタノール消毒には耐性があります。消毒には次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。加熱による不活化は中心温度85℃、1分以上の加熱が推奨されています。

 表3のように、ノロウイルスはカリシウイルス科に属します。札幌で見つかったサッポロウイルス(Sapporo virus種)もこの科に含まれ、食中毒や感染症をひき起こします。サポウイルスと呼ばれることもあります。

3)ノロウイルス食中毒の予防

 食中毒は1年を通して発生します。特に冬になるとノロウイルスなどによる、感染性胃腸炎や食中毒が流行します。ノロウイルスは、少量でも手指、食品などを介して口から入り腸にたどり着くと、増殖し、腹痛やおう吐、下痢などの症状を引き起こします。ノロウイルス食中毒予防のポイントは、①持ち込まない、②つけない、③やっつける、④広げないです。

 ノロウイルスに感染した方の世話をしたり、汚物を処理したりするときには、マスクや手袋などで防御してください(図2、図3)。

4)ノロウイルスに感染したら

 下痢やおう吐、発熱など、ノロウイルスによる食中毒と思われる症状がみられた場合には、仕事や学校に行こうとせず、病院で診察を受けましょう。ノロウイルスに感染していた場合、職場や学校に行ってしまうと、多くの人に二次感染を広げてしまうおそれがあります。また、症状があるときは、食品を直接取扱う作業をしないことも大切です。
 ノロウイルスの感染と思われる症状があることを職場や学校に伝え、すぐに医療機関を受診しましょう。ノロウイルスと診断された場合は、その旨を職場や学校に連絡し、医師の許可が出るまで自宅で休養します。
 自宅でも、①持ち込まない、②つけない、③やっつける、④広げないの4つの対策を徹底し、家族に二次感染を広げないように努めましょう。家族がノロウイルス感染症になった場合も、自分が感染しないように予防しましょう。 

 ノロウイルスは、症状が治まってからもしばらくの間、便から排出されます。医師の指導に従ってください。常日頃から、手洗いなどの予防を徹底しましょう。

5)食中毒で逮捕

 2025年2月には、とんでもない事件が起こっています。図4のようにノロウイルス食中毒による営業停止命令中に、弁当を作り、販売していたのです。関係者3名が逮捕されています。

 食品安全基本法には、「食品関係事業者は、自身の活動が食品の安全性に影響を与えることを認識し、安全確保に責任を持つ」と明記されています。猛省を求めたいと思います。

参考文献:

1) FAO/WHO: Microbiological risk assessment of viruses in foods Part 2: Prevention and intervention measures, Rome, 2026, ISSN 1726-5274

https://openknowledge.fao.org/handle/20.500.14283/cd7637en

2)東京都:社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル(令和6年3月改訂)

https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/noro/manual.html

3)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A(令和3年11月19日改訂)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html