株式会社 バイオ・シータ 食品細菌迅速自動検査システム DOX (DOX-60F DOX-30F) 一般生菌/大腸菌(群)を迅速に測定

NEW 第98話 こどもの日と食べ物

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司
一色先生の略歴
http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

2022/5/1 update

  

 5月5日はこどもの日。この時期には、柏餅やちまき(粽)を食べます。菖蒲湯に入るという風習もあります。端午の節句に由来するそうです。今も昔も、こども達がスクスクと健康に育って欲しいと願う気持ちは、変わりはありませんね。

 柏餅は、日本独特のお菓子です。柏の古い葉は、新しい葉が出てから落ちます。「家系が絶えない」「子孫繁栄」と結びつき、縁起のいい食べ物とされました。ちまきは、中国から伝わったものです。もともとは竹筒に米をつめたものでした。その後、「茅ちがや」の葉で包むようになりました。「ちがやまき」、やがて「ちまき」と呼ばれるようになりました。現在は、米ではなく、ういろう(外郎)や葛を包んだ、こどもが喜ぶお菓子が多くなりました。

 こどもの食べ物に関して、気になるニュースが届いています。コロナやウクライナ問題などが我が国の食生活にも影響を及ぼしています。食生活にも不安が付きまといますが、参考にしてください。

 

 

1)チョコレート菓子

 4月5日にイタリアの大手菓子メーカー・フェレロは、「キンダーKinder」ブランドの卵形チョコレートなどを自主的に回収(リコール)していると発表しました。サルモネラ属菌の食中毒との関連が浮上していることを受けての予防措置としてのリコールと説明しています。図2は、英国食品基準庁FSAが注意喚起を行っているチョコレート菓子の写真です。

 対象製品はベルギーのフェレロ工場で製造され、ベルギー、英国、フランス、ドイツ、スウェーデンで発売されています。卵型のチョコレート菓子は、キリスト教の復活祭「イースター」を迎える春の時期には、こども達に人気が高まるそうです。

 英国政府は、サルモネラ属菌食中毒の患者は63人と発表しています。また、フランス保健当局は患者21人(平均年齢4歳)が報告されており、うち15人が回収対象になっているキンダー製品を食べたと報告しています。証言している。

 仏当局は、英仏で確認されたサルモネラ菌は同株で、アルロン工場で作られたキンダー製品と関連があると指摘しています。一方フェレロは、「出荷されたキンダー製品からはサルモネラ属菌は検出されていない」と報告していますが、関係製品は店頭から自主的に回収されています。

サルモネラ属菌は、第68・78・79話でもお話したように、深刻な食中毒を起こす制御の難しい感染型食中毒菌です(表1)。胞子は作りませんが、地球上に広く分布しフードチェーンに深い関りを持っています。また、犬やカメなどのペットやその餌も感染源となります。

 

 

 今回チョコレートなどの水分活性の低い食品などでも生き残り、深刻な食中毒を起こします。わが国での乾燥イカ菓子(バイバリイカ)、米国でのピーナツバター食中毒などの低水分活性食品による食中毒事例も忘れないようにしましょう。

 

 

2)育児用調整粉乳

 米国で育児用粉乳が原因と疑われている、クロノバクター属菌(Cronobacter)に感染した2人の乳児が、死亡しています(図3)。米国食品医薬品庁(FDA)は3月1日に、商品名「Similar PM 60/40」(ロットコードは缶入りが27032K80、ケース入りが27032K800)もリコールすると発表しました。すでに、Abbott Nutrition社は2月17日に、同社ミシガン州スタージスの工場内でCronobacter sakazakiiが見つかったために、粉ミルク3種「Similac」「Alimentum」「EleCare」の一部のリコールを行っていました。

 米国疾病対策センター(CDC)は2月28日、同工場で生産された粉ミルクを与えられた乳児が、死亡したと発表しました。FDAによると、この乳児は感染前に「Similac PM 60/40」を与えられていました。これらのリコールされた製品を飲んだ5人の乳児が、発症し入院している。そのうち4人がCronobacter sakazakiiに感染し、残りの1人はサルモネラ属菌に感染していました。FDAは、クロノバクター属菌が乳児2人の死亡の原因になった可能性が高いと推定しています。

 

 

 クロノバクター属菌は、表2に示すように腸内細菌科のグラム陰性桿菌で、この菌による粉ミルクの汚染とそれに伴う新生児の髄膜炎が知られていました。この原因菌の研究にも貢献したわが国の故・坂崎利一博士にちなんで、「Cronobacter Sakazakii」と命名されていました。FDAの調査によれば、Cronobacter感染乳児4人は全員、上記の施設で製造された乳幼児用調製粉乳を喫飲していました。製品や環境から検体が採取され、検査され、その結果は以下の通りでした。

 

・当該施設の環境由来の5検体がCronobacter sakazakii陽性であり、このうち4株はFDAによる検査、1株は同社による社内検査により検出された。

・全ゲノムシークエンシング(WGS)解析を行った結果、分離された5株のC. sakazakii株はすべて異なる株であった。

・FDAが採取した複数の製品検体について検査を行った結果、すべてC. sakazakii陰性であった。

 

 CDCは、本調査に関連して入手した患者由来2検体に関する検査を既に完了しています。WGS解析の結果、これらの2検体由来の分離株については、Abbott Nutrition社の当該施設で採取された環境検体由来の複数のクロノバクター属菌株とも、また国立生物工学情報センター(NCBI)のデータベースに登録されているその他のすべての臨床株とも遺伝学的に同一の株とも一致していません。患者由来株と製品や環境由来株が一致しませんが、Cronobacter sakazakiiによって乳児4名が感染し、そのうち2名が死亡していることは事実です。乳幼児は免疫が未発達であり、新生児では特にリスクが高いことに注意が必要です。

 

 

3)注意不足による健康被害 

 2022年4月7日に、京都市内の子育て支援施設から京都市に集団体調異常の通報がありました。京都市保健所が調査したところ,施設で昼食に「ニラのしょうゆ漬け」を食べた77人のうち12人が4月7日午後0時15分から午後2時30分にかけて嘔吐,発熱等の症状を訴えていることが判明しました。また,ニラとして調理に使用した植物の特徴がスイセン類の特徴と一致しました。 

 京都市保健所では,患者の症状及び発症の状況がスイセン類によるものと一致し、患者に共通する食事が当該子育て支援施設で提供された給食のみであることから,当該子育て支援施設が提供した食事を原因とする食中毒であると断定しました。 

 子どもたちは、とんでもない目にあってしまいました。スイセン類はヒガンバナ科の植物で,ヒガンバナアルカロイドという有毒成分が含まれています。スイセン類の葉,球根等全ての部位が有毒で,葉が「ニラ」と,球根が「タマネギ」と類似しています。知らない植物,種類が判別できない植物は採らない,食べない,売らない,人に渡さないようにしましょう。家庭菜園や畑などで,野菜と観賞植物を一緒に栽培するのは、やめましょう。可食野菜に混じって有毒植物が生えていることがあります。可食植物との厳密な区別管理が必要です山菜採りなどをするときは,よく確認して採り,調理前にもう一度確認しましょう。

 4月8日には、宮崎県でグロリオサの根をヤマイモと間違えて食べた方が死亡しています。これまでも、多くの方が誤食により死亡を含む健康被害を受けています。厚生労働省は、自然毒食中毒を起こした原因食品について、ホームページで「自然毒のリスクプロファイル」として解説し、注意を呼びかけています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

 下記の有毒植物は写真も示されており、間違って食べないように注意喚起されています。こどもも大人も食べないようにしましょう。

 

【アジサイ・アマチャ・イヌサフラン・カロライナジャスミン・グロリオサ・クワズイモ・ジギタリス・ジャガイモ(芽の部分や緑変した個体)・シャクナゲ・スイセン・スノーフレーク・タマスダレ・チョウセンアサガオ類・テンナンショウ類・ドクゼリ・ドクニンジン・トリカブト類・バイケイソウ類・ハシリドコロ・ヒメザゼンソウ・ベニバナインゲン・ユウガオ・ヨウシュヤマゴボウ】

 

  こども達は、元気にお腹一杯、美味しい物を食べて欲しいものです。大人は、ご先祖から受け継いだ食べるための知恵や技術を次世代に渡して欲しいものですね。安全な食料の安定調達を心がけましょう。

 

参考文献:

1) D. Bean, A. Greenhill : Surprise! There might be Salmonella in your chocolate, The Conversation, April 14, 2022
https://theconversation.com/surprise-there-might-be-salmonella-in-your-chocolate-180813

2)岡田由美子: Cronobacter属菌について、食微誌, 34(2), 65‒75, 2017

3)京都市:食中毒の発生について、2022年4月11日、https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000110/110109/220411oshirase.pdf

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