株式会社 バイオ・シータ 食品細菌迅速自動検査システム DOX (DOX-60F DOX-30F) 一般生菌/大腸菌(群)を迅速に測定

第78話 「タマネギによるサルモネラ属菌集団食中毒」

 

 

北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 


図1は、アメリカとカナダで900人近くが食中毒に苦しんでいるという報告です。原因食品はタマネギ、病因物質はサルモネラ属菌Salmonella Newportでした。広域かつ大型のリコール・製品回収が行われています。新型コロナウイルス感染症の被害にも苦しむ北米の人達は、さぞかし困っておられるでしょうね。死者は出ていないそうですが、114人が入院したそうです。

1)事件の概要


米国食品医薬品局(FDA)によれば、食中毒の原因食品はカリフォルニア州のトムソン・インターナショナル社が生産したタマネギでした。同社はすでに5月1日以降に出荷された全てのタマネギの回収を行っています。FDAなどの関係機関は、同社のタマネギを食べないように指導しています。

サルモネラ属菌は、摂取されて症状が現れるまでに遅い場合には1週間の潜伏期間があることや、発症したことが公的機関に報告されるまでに2~4週間程度かかることを考えると、被害は今後も拡大する可能性があります。

また、タマネギは、貯蔵される場合もあり、サルモネラ属菌は胞子を作りませんが、環境耐性が強く長期間生存する可能性もあります。乾燥(バリバリ)イカやピーナッツバターを汚染し、大型の食中毒を引き起こしたこともあります。表1は,サルモネラ属菌の特徴を示しています。


食品衛生分野では,サルモネラ属菌という用語を使います。サルモネラ,サルモネラ菌,サルモネラ属細菌という呼称を使う方もいます。学名による分類よりも,血清型による分類の方が良く使われています。血清型は2500以上にも及ぶとされ,学名はイタリック体,血清型はゴシック体で表示されます。サルモネラ属菌の研究は,奥が深く,さらなる整理整頓も必要であると思われます。

汚染された赤タマネギはアメリカとカナダ各地の卸売業者・レストラン・スーパーなどに出荷されていました。また回収対象には、まるごとのタマネギだけでなく、付け合わせや惣菜などに加工されたものも含まれています。


図2は、FDAが発表した「汚染されている可能性があり,食べてはいけないタマネギ」の識別ラベルです。カナダの衛生当局も、タマネギの出所が不明な場合も廃棄し、手を洗うよう注意を喚起しています。

サルモネラ属菌に汚染されたタマネギをきちんと調理したとしても、菌が他の食材や調理器具に付着している恐れもあります。食中毒のリスクは残り、菌は周辺に移動し二次汚染を引き起す場合もあります。


2)サルモネラ属菌の感染経路


 環境に適応する能力を持つことから、広範囲な食品を通じて食中毒を引き起こします。加熱が不十分な鶏肉や卵、牛肉や豚肉、加熱殺菌されていない乳製品、汚染された水産物などが媒介する場合が多いようです。わが国では、卵を生で食べることがあり、要注意です。生鮮野菜や果物でも感染することがあります。

今回の汚染されたタマネギによる食中毒は、サラダなどに彩りとして赤タマネギなどを生で使ったことが原因と考えられます。また、加熱不足や他の食材を二次汚染したことが原因となった場合もあると考えられます。

サルモネラ属菌については、ペットとして飼われているミドリカメなども保持していることにも注意すべきです。ペットやその飼育環境に触ったら、忘れずに手洗いをすべきです。 新型コロナウイルス対策にもなりますので、石鹸を使った手洗いを励行しましょう。


 忘れてはならないのは、健康保菌者の問題です。図3に示したように、無症状で腸チフス菌を保菌し、多く方に迷惑をかけたメアリーさんの教訓を忘れないようにしましょう。食品取り扱い者は、検便を受けて保菌者ではないことを確認するとともに、日々、自らの健康維持に務めましょう。

 感染後、6~48時間の潜伏期間を経て、吐き気・嘔吐・発熱・下痢(ときに粘血便)といった症状が現れます。腸チフス菌(S.Typhi)やパラチフス菌(S.Paratyhi A)などに感染した場合を除いて、一般にサルモネラ属菌の食中毒で死亡することはほとんどありません。

今回のタマネギ食中毒でも死者は出ていませんが、菌が腸から血管に入ってしまうと、重症化することもあります。特に5歳未満の子供、65歳以上の高齢者、病気などで免疫系が弱っている人は重症化し易いとされています。小生の知り合いで発症した人がいます。お腹が死ぬほど痛かったと言っていたことを思い出します。

 

米国では図4のように、桃によるサルモネラ食中毒も発生しています。9つの州から68人の患者が報告されています。原因菌は、S. Entiritidisでした。我が国でも、8月13日に松山刑務所でサルモネラ属菌による食中毒が発生しています。36名にのぼる患者数が報告されています。
新型コロナウイルスにも、サルモネラ属菌にも、気を付けましょう。


参考文献:


渡邊浩:腸チフス・パラチフス,日本臨床微生物学会雑誌, 29, 135-139, 2019
浅尾ら:細菌(群)の日本語名称に関する考察と提案,食微誌, 33, 1‒11, 2016
農林水産省:食品安全に関するリスクプロファイルシート、細菌、2016年10月14日
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/161014_salm.pdf#search='%E9%A3%
9F%E5%93%81%E5%AE%89%E5%85%A8%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A+%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%
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