株式会社 バイオ・シータ 食品細菌迅速自動検査システム DOX (DOX-60F DOX-30F) 一般生菌/大腸菌(群)を迅速に測定

第74話 「食品取扱現場の新型コロナウイルス対策」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/ 

 

 

 

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス(COVID-19)と食品の安全性に関する食品取扱者向けのガイダンスを公開しています。COVID-19は小さくて目には見えず、ウイルスとしての性質も良く分かっていません。RNAウイルスであるため変異も起こしやすく、特効薬やワクチンも開発されていません。食品取扱者には、WHOのガイダンス文書(表1)は、厚生労働省などの国内資料とともに、良い参考になります。



1)WHO暫定ガイダンス文書

 

 この文書でも、人々が食品または食品包装からCOVID-19に感染する可能性は「非常に低い」と述べられています。COVID-19は動物や人間を宿主として増殖しますが、食品中で増殖することはできません。

新型コロナウイルスは、熱により不活性化することができます。香港大学の研究では、56℃では30分後、70℃では5分後には感染性のあるウイルスは検出できなくなっています。

 

 

 さまざまな物質の表面におけるCOVID-19ウイルスの生存性を調査・研究した報告によれば、プラスチックとステンレスでは最長72時間、銅では最長4時間、ボール紙では最長24時間存続できたとされています(図1)。 WHOは、この報告について、相対湿度と温度が制御された実験室条件下で行われたものであり、実際の環境では異なる生存時間になる可能性もあることに注意する必要があるとしています。

 食品産業では、関係者各個人の衛生対策を強化し、食品や包装資材の表面が、食品取り扱い者からのCOVID-19で汚染されるリスクを排除または低減する努力が必要です。そのためには、食品衛生の基本原則について再教育トレーニングとCOVID-19に関する情報を提供することが不可欠です。

 食品関係事業者は、食品安全リスクを管理し、汚染を防止するために、一般衛生管理とHACCPの原則に基づく食品安全管理システム(FSMS)を実施している必要があります。 必要なプログラムには、適切な衛生管理手順、5S、各エリアのゾーニング、原材料、半製品、製品の管理、保管、流通、輸送などの従事者の衛生教育と仕事への適性の確保が含まれます。



2)食品取扱者の保護

 

 WHOはマスクや手袋などの個人用保護具(PPE)は、適切に使用した場合、ウイルスや病気の蔓延を減らすのに効果的であると推奨しています。食品業界でも、人と人の物理的な距離を保つことが必要です。その上で、頻繁で効果的な手洗いと衛生対策を促進するように努力しましょう。

 手洗いや消毒などの個人衛生、必要に応じた手袋とマスクの着用、専用の白衣等の作業着や衛生的な靴の使用、または体調が悪いときの食品取扱区域への立ち入り禁止などが必要です。
 手袋は病原体が手の表面に付着し、蓄積することを防止し、食品を汚染すること防ぐことができます。きれいに手を洗って、手袋をすることが必要です。手袋は必要に応じて、できれば頻繁に交換する必要があります。手袋を交換するときと取り外すときは手を洗う必要があります。

 手洗いを省略するために、その代わりとして、使い捨て手袋を使用すべきではありません。手洗いは、感染に対するより大切な防衛行為です。使い捨て手袋を着用すると、誤った安心感が得られ、必要な頻度で手を洗わない、いわゆる手抜きが生じる場合があります。
使い捨て目的の容器やビニール袋などを、再使用しないでください。再利用可能な番重やコンテナの場合、適切な使用およびその洗浄・殺菌等の手順を検討し実施する必要があります。

 感染した従業員が食品を取り扱った場合、咳やくしゃみ、または手での接触によって、作業中の食品や食品が接触する表面にCOVID-19を付けてしまう可能性があります。
 COVID-19に感染していても、無症状のままや潜伏期である可能性があります。疾患の兆候または症状を示さないか、見落とされやすい軽度の症状を示す可能性もあります。

 COVID-19が食品に存在し続け、人々に感染するかどうかについての情報は、まだありません。しかし、国際的な大規模なパンデミックにもかかわらず、食物による感染の報告はありません。  食品生産のすべての段階で必要とされる適切な衛生管理の中で、本ウイルス対策と最も関連するのは、製造ロット間の食品設備と機器の洗浄と消毒、生の食品と調理済み食品の各段階での分離、相互汚染の回避です。

 従業員の健康を保護するための手法としては、勤務中であっても社会的距離を保つことが有効です。距離を維持できない場合には、保護シールド、搬入・搬出トラックの運転手と食品施設との接触規制、手指消毒剤の使用、施設内に必要以上の労働者を入れないこと、または可能な場合は在宅勤務などを実施する必要があります。

 




3)万一に備えて

 

 COVID-19の感染クラスターが、わが国の食品工場でも発生しています(図2)。感染者が発生したら、管轄の保健所の指示に従うことになります。農水省のホームページが参考になります(参考文献2)。

 食品工場では、発生させないことが大切です。予防第一です。食品工場での新型コロナウイルス対策は、上記のWHOのガイダンスのように食品衛生管理ができていることが基礎になりますが、ロッカールームや休憩室、食事室が盲点のようです。病院などの新型コロナウイルス感染も同様の油断が指摘されています。

 我が国の工場内では、人と人との距離を2mも明けるのは困難な場合が多いと思います。工夫が必要です。仕事場で対策を取っていても、休憩室やロッカールーム、自宅等で緊張がゆるんで感染する恐れがあります。

参考文献4,5)などのホームページに一般人向けの対策の解説や動画があります。関係者に見ていただいたら良いと思います。

さらに、管理職のみならず同じ職場で働く仲間は、COVID-19の感染者や濃厚接触者がいたことが判明した場合の対応を考えて、準備をしておくことも忘れずに行う必要があります。 COVID-19の特効薬やワクチンが実用化されるまでは、我慢して、できるだけの対策を続けて行きましょう。




参考文献:

 

1)WHO: COVID-19 and food safety: guidance for food businesses, 2020年4月7日
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331705/WHO-2019-nCoV-Food_Safety-2020.1-eng.pdf#search=%27COVID19+and+food+safety%3A+guidance+for+food+businesses%27 日本語版(WHO神戸センター)
https://extranet.who.int/kobe_centre/sites/default/files/pdf/20200407_JA_Food_Safety.pdf

2) 農林水産省:新型コロナウイルス感染症で影響を受ける食品事業者の皆様へ
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/saigai_r2-march.html

3) A.W.H.Chin et. al.: Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions, Lancet Microbe, Online April 2,2020,
https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(20)30003-3/fulltext

4)首相官邸:新型コロナウイルス感染症に備えて 
~一人ひとりができる対策を知っておこう~
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

5)政府:3つの密を避けよう!
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg20553.html

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