株式会社 バイオ・シータ 食品細菌迅速自動検査システム DOX (DOX-60F DOX-30F) 一般生菌/大腸菌(群)を迅速に測定

第60話 「キャラメルアップル(りんご飴)食中毒再発」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/ 

 

 

 

「2017年の米国のリステリア症患者のうち、少なくとも3名はキャラメルアップル(図1)
を食べたことが原因である」との調査結果が、疾病管理予防局(CDC)から発表されました
。第23話でお話ししましたように、米国では2014年に、7名の死者を出したキャラメルアッ
プルによるリステリア食中毒が発生しています。再発したキャラメルアップルの対策につい
て考えてみましょう。

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1) 2014年のキャラメルアップル食中毒


 米国のキャラメルアップル製造業者3社が販売した包装済みの製品(アメリカ版リンゴ飴)によってリステリア食中毒が発生しました。12州で35人が発症し、死者は7人にもなりました。キャラメルアップルは、生のリンゴ果実をシロップや飴などでコーティングし、手で持つための棒(柄)を差し込んだものです。我が国では、りんご飴と呼ばれています。


 昔から西洋諸国では、秋の収穫祭やハローウインなどの時期に作られ、食べられていました。りんごは酸を持つためpHが低く、外側のキャラメルは水分活性Awが低いため微生物の増
殖には不向きであり、冷蔵保管の必要もないと考えられていました。


 キャラメルアップル食中毒の原因がリステリア(Listeria monocytigenes)であることが分かり、食中毒に至ったメカニズムの研究が行われました。その結果、第23話でお話ししたようにキャラメルアップルを持つために差し込んだ木製の柄が大きな役割を果たしていることが明らかになりました(図2)。

 

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 大量のリステリアを摂取すると短時間に胃腸炎症状が現れ、発熱、頭痛などの症状も現れますが、人の体内に取り込まれて数日から数週間、潜伏し、髄膜炎、敗血症、流産などの深刻な症状を引き起こすこともあります。高齢者や妊婦は重症化する可能性が高く、特に妊娠中の感染は胎児に深刻な影響を与えることもあるため注意が必要です。南アフリカで216人もの犠牲者を出したリステリア食中毒では、多くの乳幼児が亡くなっています。


 リステリアは、表1のように胞子を作りません。高温には弱い細菌ですが、冷蔵・冷凍などの低温には強い細菌です。水分が少ない環境や酸性の環境では増殖しにくいと言われていますが、バイオフィルムを作って厳しい環境でも生き残ころうとする性質を持っている。図2に示されているように、キャラメルアップルでも木製の柄の毛細管現象によってりんご内からもたらされる水分を利用して生存し、増殖したと考えられています。

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2) キャラメルアップルなどのリステリア対策


 リステリアは加熱に弱い菌です。加熱できる食品は、十分に加熱して食べることが対策になりますが、加熱後の再汚染にも注意が必要です。キャラメルアップルのように加熱できない食品は、原料の生産から、加工、流通、小売り、消費の全ての段階で清潔な取扱いが必要になります。リステリアは、どこにでもいる細菌ですので、食品の取扱い環境を清潔に保つことも必須の条件になります。


 リステリアは生存に不向きな環境でも、生き残るために適応しようと努力しています。我々も見習うべき点もあります。キャラメルアップルの木製の柄がもたらした生き残れるチャンスを逃さずに利用したようです。人間の優れている点は、欠点が分かると、その欠点を補う工夫を行うことです。昨年、キャラメルアップルの木製の柄をソルビン酸カリウムやアスコルビン酸(ビタミンC)の水溶液に浸漬することで、キャラメルアップルでのリステリアの増殖を防止できることが発表されています。図3に示されるように、実用的な微生物制御方法だと思われます。

 

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 わが国では,リステリア食中毒はソフトチーズによる1例のみが認定されていますが、病院からは年間200例ものリステリア症の報告が行われています。食中毒は,診察した医師から保健所への報告が行われて調査が開始されます。実際のリステリア食中毒は,さらに多いと考えられます。わが国でも油断せずに,積極的に対策を講じるべきです。


参考文献:


1) J. R. Marus, et al: Outbreak of Listeriosis Likely Associated with Prepackaged
Caramel Apples, United States, 2017, Morbidity and Mortality Weekly Report,
December 1, 2017,


2) CDC: Multistate Outbreak of Listeriosis Linked to Commercially Produced,
Prepackaged Caramel Apples Made from Bidart Bros. Apples (Final Update), Posted
February 12, 2015 4:30 PM ET
https://www.cdc.gov/listeria/outbreaks/caramel-apples-12-14/index.html


3)C.K.Carstens,et al: Control of Listeria monocytogenes in Caramel Apples by Use
of Sticks Pretreated with Potassium Sorbate. J. Food Prot.,81,1921-1928(2018)


4) 岡田由美子ら:厚生労働科学研究,食品の安全確保推進研究事業「我が国で優先すべき
生物学的ハザードの特定と管理措置に関る研究」,平成28年度分担研究報告書(2017)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201723007A

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