株式会社 バイオ・シータ 食品細菌迅速自動検査システム DOX (DOX-60F DOX-30F) 一般生菌/大腸菌(群)を迅速に測定

第50話「ギラン・バレー症候群とカンピロバクター食中毒」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

 

 

 

 カンピロバクター食中毒によって,難病「ギラン・バレー症候群」が引き起こされることがあります。ギラン・バレー症候群に対して新しい治療法が試みられ、良い成績が得られたというニュース(図1)が報道されました。千葉大学病院の桑原聡教授は,「最終的には臨床の現場で薬が実際に利用できるようになることを目指す」ことを発表しています。

 

ishiki501.jpg

 

 カンピロバクター食中毒のニュースは、我が国のみならず先進諸国から届いています。米国では図2のように、会計検査院(連邦議会に所属)が政府に対して、対策を強化するように勧告を行いました。カナダ、EU諸国では、国民にカンピロバクター食中毒を予防するよう呼びかけるキャンペーンが行われています。厚生労働省も、注意を呼びかけています。内閣府食品安全委員会は、リスクプロファイルの見直しを行い、表1にまとめた内容の公表を準備しています。

 

ishiki502.jpg

 

ishiki503.jpg

 

 カンピロバクター食中毒は下痢・腹痛が主な症状ですが、患者さんの中にはギラン・バレー症候群を発症される方もいます。重症の場合は、身動きできなくなり、呼吸も困難になる場合があります。フードチェーンにおけるカンピロバクターの蔓延を食い止める必要があります。

 

1)カンピロバクター食中毒について

 第49話では、平成29年の食中毒発生状況を考察しました。カンピロバクター食中毒は、食中毒事件数では第1位、患者数ではノロウイルスに次いで第2位でした。カンピロバクター食中毒の特徴は、表2に示しました。病因物質としてのカンピロバクター・ジェジュニと同コリの性質については、表3にしました。我が国の食中毒の集計は、診察した医師による届け出を基本としている事から、実際の患者数はもっと多いと考えられます。

 

ishiki504.jpg

 

ishiki505.jpg

 

 カンピロバクターは少ない菌数でヒトに感染し、食中毒を起こします。養鶏場等の農場から食卓まで、清潔を保ち、対策を徹底することが必要です。耐熱胞子を作らない加熱に弱い細菌ですので、適切に加熱して食べることを実践するようにしましょう。

 

2)ギラン・バレー症候群とは

 何らかの理由で末梢神経が障害され、脱力・しびれ・痛みが生じる疾患です。カンピロバクター食中毒の後遺症としても症状が現れることがあります。末梢神経は全身に分布していて、運動神経、感覚神経、自律神経が含まれます。ギラン・バレー症候群は末梢神経に障害が生じ、脱力、しびれなどの症状が続きます。発症率は、国内統計により年間10万人に一人程度とされています。ギラン・バレー症候群は、カンピロバクター食中毒のように、何らかの感染症を原因として発症すると考えられていますので、感染症の流行の有無や種類によって発症の頻度も変動すると考えられます。

 

 ギラン・バレー症候群は、高齢者に多い疾患です。理由は不明ですが、加齢とともに増加することが分っています。すべての患者さんに一律に同じような症状が現れるわけではありませんが、典型的な初期症状は、ピリピリとした手足のしびれです。しびれが現れてから数日中に、手足に力が入りにくくなることが多いようです。軽症であれば、発症に気づかない場合もあります。重症の方では、立ち上がれず、歩行が困難になる方もいます。話すことができず、水も飲み込めなくなるケースもあります。さらに重症化すると、全身が動かなくなることもあります。筋力が低下すると呼吸機能が低下するため、人工呼吸器が必要となります。

 

 ギラン・バレー症候群の原因は解明されていませんが、何らかの感染症に罹患した3~4週間後に発症する方が多いようです。先行感染は、呼吸器感染が多いようですが、消化器感染であるカンピロバクター食中毒もギラン・バレー症候群を発症する場合があります。カンピロバクター食中毒の主な症状は、嘔吐や下痢などですが、末梢神経症状があらわれる患者さんもおられます。

 

 ギラン・バレー症候群の発症には、免疫システムが関係していると考えられています。何らかの細菌やウイルスに感染し、この免疫システムが活発になると、ギラン・バレー症候群の発症につながると推測されています。カンピロバクターと人間の末梢神経には構造が似ている部分があり、免疫システムが誤って末梢神経を攻撃してしまう結果、ギラン・バレー症候群の発症につながると考えられています。

 

【参考文献】

1)厚生労働省:カンピロバクター食中毒対策の推進について、平成30年3月31日

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000159937.pdf

 

2)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル、ギラン・バレー症候群(2009)

http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c17.pdf

 
nach oben